中区の新天地公園から至近のコーヒー店。まとわりつくようなミルクの余韻が楽しめるラテや、苦みの少ないすっきりとした味わいのドリップコーヒーを目当てに、若い女性も足を運ぶ。田中裕士オーナーは、
「独特な酸味が苦手で全く飲めなかった20代中頃、当時勤めていたカフェでバリスタという仕事を知り、のめり込むように。凝り性な性格からか、〝コーヒー情
勢〟を知りたいと訪れた東京で出会ったエスプレッソに感銘を受け、苦手な人も気軽に楽しめる店を開きたいと決心。苦み・酸味・コクのバランスが取れた一杯を求めて飲み会の締めに利用する人もいます」
ニカラグアやエルサルバドルなどの生産者から直接仕入れた豆を自家焙煎。焙煎度合いや風味など客の好みをヒアリングして出す一杯を機にコーヒー好きになる人もいるという。
「生産国や精製、抽出方法などで味わいが変わり、奥が深い。当店でしか飲めない一杯を提供できるよう、まい進します」
根っからの野球好きで、当時は弱かった新庄高校野球部で主将を務めました。その母校は2014年春の甲子園初出場から昨夏までに通算6回という見事な結果を見せてくれ、うれしく思います。輩出したプロ選手の中でなじみ深いのは、元カープ選手で現在は投手コーチの永川さんでしょうね。
試合は偶然の要素も大きく、観戦時は結果に一喜一憂するよりも、勝つための体制づくりの分析が面白い。会社経営の人員や経営資源の采配と共通点が多く、結果を呼び込むための準備の重要性を実感します。カープは今季、選手を適度に休ませながらも巧妙に得点機をつくり、うまく回っています。時々の戦術や采配、選手の判断が最終順位に表れる。一人の観戦者として、いつの試合の何が最終的にカギを握っていたのかを振り返り、合点できると満足感があります。
森下や栗林、小園ら若手が頑張っていますが、実は私の次男は崇徳高校から関西大学野球部に入り、対戦相手に末包や黒原がいました。森は大学の先輩です。野手でほぼレギュラーだった次男と違い、崇徳から摂南大学に進んだ長男は最終戦に一度だけ公式戦のマウンドに立たせてもらい、後輩たちが長男の登板機会をつくろうと頑張る姿に目頭が熱くなりました。結局、長男は打たれましたが、息子たちに野球を教えたことなどを思い出して感慨深かった。長男の結婚式には多くの部員が参加してくれるそうです。野球は人間力など多くの財産を築かせてくれます。広島がそんな環境に恵まれるのもカープあってこそ。これからも地元スポーツを盛り立ててほしい。
むろんワンチャンスではないが、社会人へ第一歩を踏み出す就職先の選択は誰しも慎重になる。学生の就職希望先人気ランキングを見ると、世相を反映して浮き沈みもあるが、やはり安定感のある大企業が上位を占め、中小企業の大方は人材確保に苦労を強いられる。そうした中、意表を突く企業もいる。むしろ不人気の業種なのに破格の人気を集めており、どこに秘訣があるのか、話を聞いた。
産業廃棄物処理のタイヨー(安芸区)は毎月30人もの中途入社希望者が集まるという。しかもその半数は女性。元山琢然(たくぜん)社長(36)は、
「5年前に父から社長を継いだときに社員が大量退社。心底苦労し、言い知れぬ不安もあった。ある日、仕事を終えて社員と飲んでいると、その店で働く女性が昼間は事務職をこなし、夜も働かないと子供を養えないという話を耳にした。ならば女性が安定して働ける環境をつくれば、人は集まるのではと考えた」
動きは早かった。敷地の一画に託児所を開く。さらにマニュアルだった清掃車は全てオートマチックに変更し、休憩室やトイレも一新。遠方から本社近くに移り住む人のために借り上げ社宅にも対応した。楽しく働く様子をSNSで積極的に発信し、デジタルマーケティングを駆使してターゲットの求職者に情報を届けるなど、戦略的な求人活動を仕掛ける。
「ゴミ収集の業務自体で他社との差別化は難しい。しかし働く人が元気で、生き生きとしていれば会社も元気になると思った。そこは大手にない中小の強みで、素早く決断し先手を打つことができる」
丁寧に要望をくみ取り、実行に移す。今後も子ども食堂の運営や救急救命士の資格取得による社会貢献活動など、独自性のある取り組みを続けていく方針だ。
大阪以西で警備業を営むリライアンス・セキュリティー(中区)は今期、過去最高の19人の新卒者を迎えた。広島大学や島根大学など国立大出身者を含み女性が11人を占める。2011年から業界に先駆けて始めた新卒採用の道のりは決して平たんではなかった。田中敏也社長(61)は、
「工事現場の旗振りと見下されたこともある。この会社で働くと決意したが、親から警備業だけは辞めてと懇願されて去った学生もいた。今年は内定辞退者ゼロだった。積み上げてきたことがようやく成果につながってきた」
県内の警備業で唯一働き方改革認定を受け、3月には健康経営に取り組む上位企業500社に、大阪以西の同業で唯一認定された。コロナ禍を受け、全国同業では初めて全従業員に一時金を支給し注目された。独自の福利厚生を整え、子どもが増えるほど増額する手当て(最大3人で月6万円)や、希望する高齢者には安否確認用の24時間緊急通報装置の費用を全額補助。
「待遇改善に注力する一方、社員教育に徹底的に取り組んでいる。目指す姿を『警備業界のディズニーランド』とし、お客さま満足、感動提供をミッションに掲げる。これは全従業員に安心・安全を守るという高い使命感がなければ実現しない。崇高な意識を持ち、業界をイメージから変えてやるという強いメッセージを共有し、社員と共に先頭集団を突き進む覚悟だ」